混沌と破壊の中から生まれた、“再構築されたアメリカ”
Machine Gun Kelly(MGK)の新作『lost americana』を聴いた。Pitchforkのレビューで存在を知って再生してみたんだけど、結論から言うと、良さと既視感がせめぎ合う、ちょっと複雑な1枚だった。
自分にとってのMGKは、やっぱりあの頃の「bloody valentine」
MGKをちゃんと聴いた最初のきっかけは、2020年の『Tickets to My Downfall』。
もともと大好きなBlink-182のTravis Barkerと組んだことで話題になっていて、試しに聴いたら「Bloody Valentine」に完全にやられた。当時めちゃくちゃ聴いてたし、今でもふとしたときに再生したくなるくらい好きな曲。
ただ、その次の『Mainstream Sellout』には正直あまりピンと来なかった。MGKらしさというか、あの時のグッとくる感覚が薄れていた印象がある。
そしてこの新作、『lost americana』
そんな中で出たこの新作。Pitchforkのレビューは5.6点とやや低めだったけど、トレーラーでBob Dylanがナレーションをしてるという情報を見て興味を持った。内容としても「アメリカ再構築」みたいなテーマを掲げているようで、それ自体はすごく面白い切り口だと思う。
実際、アルバムの1曲目「outlaw overture」はめちゃくちゃ良かった。
イントロから一気に引き込まれて、初回で「これは来たな」と思ったし、今でもこの曲だけは何度も繰り返し聴いてる。
途中でまるで別の曲になったかのように展開がガラッと変わる感じも好きで、転調の妙がこの曲のハイライトだと思う。
でも何度も聴いているうちに……
アルバム全体を通して聴いていくと、最初の印象とは少し違った感覚が出てくる。
メロディや展開に、どこかで聴いたことのあるような感じ──つまり既視感があって、曲を重ねるごとに「これは新しいのか? それともよくある引用の集積なのか?」と、自分の中でちょっとしたノイズが生まれてきた。
それこそPitchforkのレビューでも触れられていたように、このアルバムは多くの過去のアイコンを参照している(The Who、Guns N’ Roses、Kate Bushなど)。引用・オマージュの域を超えない瞬間もあり、そういう部分で熱量は感じても、「突き抜けた新しさ」とまでは言いづらい。
「ジャンルを混ぜる」から「ジャンルを壊す」へ
この作品は、ポップパンク、オルタナロック、ヒップホップ、エモ、そして映画音楽的なスケール感まで、ジャンルを超えて何でも混ぜてくる。でも、それがまとまりとして機能しているかというとやや疑問も残る。まさに“ごった煮”という言葉が合う。
ただ、それがMGKらしさでもあるし、ジャンルに縛られたくないという彼の強い意志の表れでもあると思う。実際、私生活でもいろんな変化があったみたいだし(失恋、リハビリ、スタジオ火災…)、それらを音でぶつけてるのがこのアルバムなんだろう。
結局どうだったか?
正直、評価しにくい作品だと思う。良い瞬間も確かにある。outlaw overtureは最高だったし、MGKの“叫び”のような感情は随所に感じた。でも、その熱さをどう受け取るかは聴く人次第。
Pitchforkの5.6点という評価にはある種の納得もある。
音楽的にはカオスだけど、その中にリアルなパーソナルが刻まれている、そんな印象のアルバムだった。

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