― ありふれた美しさが連なった、“控えめな歌”たちの記録
『Five Easy Hot Dogs』に続き、Mac DeMarcoが2025年にリリースした新作『Guitar』。
タイトル通りギターが作品の軸にはなっているが、今作は全12曲すべて歌入りのフルボーカルアルバム。
Pitchforkではこの作品に7.8 / 10のスコアが付けられ、高く評価されている。
📝 Pitchforkによる評価のポイント
- 「アルバム」というより“スケッチブック”
本作は、Macがカセットに録りためてきたギター中心の曲群を集めて並べたような、断片的で控えめな記録集として描写されている。
前作『Five Easy Hot Dogs』が旅先での録音日記だったのに対し、今作はより私的で、自宅的なムード。 - 演奏は驚きよりも、親しみやすさ
特別なギター技巧や構造ではなく、どこかで聴いたことのあるようなコード進行、ありふれたメロディが並ぶ。
だからこそ「日常の中にある音楽」として、聴き手の生活に自然と溶け込む。 - 歌も“控えめ”な存在感
Macの脱力ボーカルは健在で、歌声を強調するのではなく、音のひとつとして溶け込ませている。
語りすぎず、距離感を保ちながらも、確かに“歌”はここにある。 - 「捨て曲」がない理由
Pitchforkは「このアルバムには捨て曲がない」と明言している。
その理由は、どの曲も“主張しすぎない”ことを前提に作られているから。
耳を澄ましてもいいし、流してもいい。音楽に話しかけられるのではなく、そっと寄り添われているような体験がある。
🧠 総評と位置づけ
Pitchforkは『Guitar』を、Mac DeMarcoの音楽観の再提示と捉えている。
派手な展開や感情の爆発はない。
だが、ちょっとした音の動きや質感に、優しさや寂しさがにじむ──そんな繊細な記録が、このアルバムには詰まっている。
“傑作”ではないかもしれない。
でも、ずっとそばに置いておきたくなる一枚。それはPitchforkの言うとおり、「完璧なアルバムではなく、完璧なドキュメント」なのだと思う。
✍️ パーソナルメモ:私にとっての『Guitar』
Mac DeMarcoとの出会いは、2019年の『Here Comes a Cowboy』だった。
こんなに力の抜けた、ゆるいインディロックがあるのかと思ったのが最初の印象。
ちょうどコロナ禍にも突入して、家でリラックスするときによく流していた。
でも、コロナが明けて日常が少しずつ戻るにつれて、“ゆるすぎる”Mac DeMarcoの音楽からは自然と離れていった。
インストアルバムも出たけど、正直そこにはあまりピンとこなかった。
そして2025年の新作『Guitar』。
あまり期待せずに聴いてみたら、「ああ、こんな感じだったな」と思い出すと同時に、何かが違うと感じた。
それはたぶん、ジャケットの通り、すぐそばのソファでMacがぽつぽつ歌っているかのような距離感。
そこにはこれまでよりも明確に、“親近感”と“歌心”が存在していた。
今後このアルバムを何度も聴き返すのかは、まだわからない。
でも少なくともこの瞬間、ただMacの歌に身を委ねてみたいと思わせてくれたのは確かだった。
来年の来日公演も、今から楽しみだ。

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