― 揺らぎ、実験、エモーション:今月の7作品を振り返る
2025年9月にPitchforkでBest New Music(BNM)に選ばれた7作品を、スコアとレビュー要約付きで振り返ります。
ポップでもなくただのエクスペリメンタルでもない、“聴き手の奥深くに刺さる”アルバムが揃った印象の月でした。
📚 今月の選出作品一覧(スコア高い順)
| アーティスト | タイトル | スコア | ジャンル |
| Joanne Robertson | Blurrr | 9.0 | Experimental Folk / Ambient |
| Geese | Getting Killed | 9.0 | Art Rock / Post-Punk |
| Wednesday | Bleeds | 8.7 | Alternative Rock / Indie Rock |
| Lucrecia Dalt | A Danger to Ourselves | 8.5 | Experimental / Electronic |
| Algernon Cadwallader | Trying Not to Have a Thought | 8.4 | Emo Revival / Punk |
| Greg Freeman | Burnover | 8.3 | Alt-Country / Indie Rock |
| O | Sysivalo | 8.3 | Drone / Ambient / Sound Art |
🔍 レビュー要約&聴きどころ
🎨 Joanne Robertson –
Blurrr
(9.0)
「詩とギターの空白に美がある」とされる、ジョアン・ロバートソン最高傑作。即興的なギターと歌声が静かに揺らぎ、緊張と解放を繰り返す。視覚芸術とのつながりも評価され、Pitchforkは「音と空間が絵画のように配置されている」と絶賛。
→ 聴きどころ:沈黙を含んだギター、余白と緊張が美しい。
🔥 Geese –
Getting Killed
(9.0)
ノイズ/ポストパンク/グルーヴが混ざる強烈なロック作品。ケイオスとポップが同居し、ボーカルCameron Winterの変則的な歌声が牽引する。プロデューサーにはKenny Beatsを迎え、従来のロックを破壊・再構築したような内容。
→ 聴きどころ:不安定と抑制、爆発の間を揺れる。
🩸 Wednesday –
Bleeds
(8.7)
「言葉の傷と音の重み」が一体となったアルバム。破壊と再生、過去の関係性の破綻すら楽曲に昇華している。ギターとラップスティールが混ざり、歌詞が感情をねじる。Pitchforkは「音と歌詞の間にある痛み」を主題として称賛。
→ 聴きどころ:リアルな傷、バンドの変化がそのまま音に出ている。
🌌 Lucrecia Dalt –
A Danger to Ourselves
(8.5)
ミニマルな構造に、英語とスペイン語の声を重ね、アンビエントとエクスペリメンタルのあいだを彷徨うような作品。内省/生死/感覚の危うさが表現されている。「危険な静けさ」の中に潜むエネルギーがある。
→ 聴きどころ:言葉と音の境界がにじむ、聴覚のドリフト。
💥 Algernon Cadwallader –
Trying Not to Have a Thought
(8.4)
14年ぶりのアルバム。スクリーモ的な要素を残しつつ、構造と感情はより研ぎ澄まされた。再始動にふさわしい激情とメロディのバランス。「ただの再結成じゃない」とPitchforkもその熱量を評価。
→ 聴きどころ:懐かしさと今っぽさのギリギリのせめぎあい。
🌲 Greg Freeman –
Burnover
(8.3)
ヴァーモント出身SSWによる、オルタナ×カントリーの叙情アルバム。BurnoverやWolf Pineといった楽曲では、失恋、歴史、地域性を詩的に語る。Pitchforkは「最初からそこにあったようなアルバム」と評し、既視感とオリジナリティの同居を評価。
→ 聴きどころ:語りと風景、物語のように展開するロック。
💫 O –
Sysivalo
(8.3)
Mika Vainio(Ø名義)による音響作品。ドローン、ノイズ、静寂を用いて「沈黙の濃度」を表現する。耳が“聴く”というより“感じる”状態になるような体験。構造というよりも、波のような音。
→ 聴きどころ:時間が止まるような音の空間、物質化した無音。
💬 月間ふりかえり
今月のBNMは、「どれだけ静かに人を揺さぶれるか」への挑戦だった気がする。
Joanne RobertsonやLucrecia Daltのような“余白系”と、GeeseやWednesdayのような“激情系”が共存していて、静と動のエネルギーが同じフレームにあるのが面白い。
Pitchforkらしい選出ではあるけれど、個人的にはWednesday『Bleeds』の熱量と、Greg Freeman『Burnover』の語りの美しさが残った。
どれも一回で掴むというより、じわじわ来るタイプ。季節の変わり目に、ふさわしい音楽たちでした。

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